「将棋が好きだ」と言い切るほど将棋を良く知っているわけではない。まして実際に将棋を指すことはほとんどない。でも、将棋界のファン。将棋指しの世界が好きなんだなあ。昔から河口俊彦(故人・棋士&作家)が好きで、氏の描く将棋界の人物像、人間模様にどっぷりとはまっている。

 羽生善治九段の四段デビューから、平成元年に初タイトルとなる竜王位獲得、七冠制覇、そして平成の終わりとともに無冠となるところまでずっとウォッチしてきたので、平成の怪物羽生善治から、令和の怪物藤井二冠の台頭と、時代の移り変わりを、将棋を通して感じている。

 将棋は「格」の世界だ。頂点に君臨するA級10人。「鬼の棲みか」と言われるB級1組。その下にB級2組~C級1組~C級2組と続く。サッカーのJリーグと同様、年間のリーグ戦を勝ち上がった者が翌年上位リーグに昇格する。頂点のA級でトップを取った棋士が、翌年4月から時の名人に挑戦できる。他のタイトルは棋士昇格1年目からタイトル挑戦の可能性があるが、将棋界の頂点「名人」のみは最短でも5年かけないと挑戦すらできない。

 藤井二冠の登場で世の中の将棋熱はかなり上がったように思う。それは羽生善治というスターの誕生と重なる。「史上最年少」はいつの世も強い訴求力がある。

 先日、B級1組を戦っていた山崎隆之八段(40歳)のA級昇級が決まった。順位戦参加23期目にしての昇級は史上最長。他の世界でも「苦節〇〇年で〇〇達成。まあ、そういうこともあるよね」と言えなくもない。しかしこれは想像を絶する快挙だと思う。何と例えればよいかわからないが、サッカーで言えば、「若くして天才と呼ばれたU美選手やK谷選手が40歳で代表選出」ぐらいインパクトがある。山崎八段は17歳でプロデビューし、新人王戦、早指し選手権、NHK杯などの棋戦優勝経験もある。文句なし若手のホープと呼ばれ、プロ9年目(26歳)でB級1組に昇格している。そこから足踏みすること13年。将棋八大タイトル保持者は全て年下。しかも2019年には、昇格どころか降格の危機を首の皮一枚で残っている。「終わっている」と言われても仕方のない立ち位置なのだ。

そこから今年は勝ち進んだ。9勝2敗でリーグ戦最終局を残して2位以上が確定、見事にA級昇格を勝ち取った。すごい、すごい、すごい!

自分のことじゃないんだけど、自分のことのようにうれしい。

その山崎八段へのロングインタビューを、webのニュースで見つけた。

「己に殉じるために」 A級昇級・山崎隆之八段ロングインタビュー<1>

記者は報知新聞の北野新太氏。こんな濃良い記事を無料で読ませてもらってありがとう!

山崎八段の来期の活躍が楽しみだ。