またも古典ですが、しばしお付き合いくだされ。

花は盛りに 月はくまなきをのみ見るものかは
雨に向かひて月を恋ひ たれこめて春の行方知らぬも なほあはれに情け深し
<吉田兼好 徒然草より>

松島超訳

桜はせ、満開のときだけ見りゃいいってもんじゃねえわ。
お月さまだって満月だけがえらいわけじゃない。
雨降りに月を思う、家に引きこもって季節の移ろいを知らずにいる、これも悪いもんじゃねえ。

高校の時の古典の授業は何故か今でも憶えている。
特にこの段は授業の時だけではなくテストに出たのまで覚えている。
なーんでかな、何となくひっかかる、かといって腑に落ちるような理解ができたわけでもない。
こういう古い言葉が突如よみがえり、生きた言葉となって自分に響いてくるときがある。

私の敬愛する友人にGSWさんがいる。

彼女はまあ、いろいろやる人で、そのアクティブさは見てるだけで十分楽しいのだ。
今年は何とカフェの営業を始めた。
それも自分のお店をもってではなく「やどかりCafé」と称してレンタルキッチンをあちこち回って、1日限りの営業を不定期(あ、塩尻はほぼ毎週か)に営んでいる。

そういうGSWさんに「やい、これからどうするだい?」と聞いてみた。
その意は「いつ自分の店を開くつもり?」なんだけど、GSWさん「え~そんなことわかんないよ」と笑って答えるのみ。

んんん? なーんだろな? これって何だっけ?

ここで突如兼好法師が顕現されるのであった。

「良いか、お主の発した質問には『自分の店を開く』が到達点という考えがあるであろう。
しかし、では今日食べた昼ごはんは『それまでの仮営業』なのか?本番ではない暫定メニューを食べたのか?考えてみよ。
吟味した材料を揃え、腕を振るい、心を込めてつくられた料理は『仮』などではなかろうて。すでに極めて完成された料理である。
だとすれば、お店を借りているとか、自分の店ではないとかは全く問題ではない。今ここにある尊いものをそのままに受け取れば良いのじゃ。」

ははあ。

法師様 高校の授業以来何となく心に引っかかっていた疑問が解けました。
そういうことでござりましたか~~~。
ヨ・コ・ヤ・マ・ノックアウト!

By ADK60